ドリーム(仮称)というトランプ手品


 このブログで,なんどか「ドリーム」という名前を出していますが,作者も原案もタイトルも知りません。学生マジックサークル時代に「ドリーム」として教えてもらったものです。しかし,他の方がこれに類する手順を演じているのを,いくどとなく見かけるので,おそらく有名な手品なのだと思われます。初めて見た時の驚きが,あまりに強烈だったため,それ以降トランプ手品をお願いされたときには,必ず演しています。現在私が演じている現象,手順は次のようなものです。詳しく書くのでちょっと長くなります。
 デックから1枚のトランプを選んでもらい,覚えてもらいます。デックに戻してもらった後,よく切りそろえ,1デックを裏向きのまま,机の上におきます。「よく切ってしまって,当てるのが大変難しいので,ヒントをもらいながら当てます。5枚ずつ見せていきますので,5枚の中にあった場合には,あったことを教えてください。その5枚の中から選ばれたトランプを当てます。」と言って,デックの上半分を取り上げ,トップから5枚を表返します。5枚を順に見せた後,客にあったかどうか確認し,無かった場合は,5枚を裏返して机上のデックに戻します。相手のトランプが出てくるまで,トップから順に5枚ずつ見せていきます。5枚の中にあった場合は,その5枚を手を手にとり,残ったトランプを机上のデックに戻します。演者は5枚トランプを確認し,1枚裏向きで抜き出した後「これがあなたの選んだトランプですが,このまま当ててしまっても面白くないですよね。」と言い,このトランプを手の中に握りこみます。すると,握ったはずのトランプは消えてします。残ったトランプも4枚しかなく,この中に客のトランプはありません。机上のデックを裏向きのまま,ゆっくり広げていくと,客の選んだトランプがデックの中ほどから表向きで出現します*1
 こんな手順です。ちなみにサークルでは,2人用の手順も習いました。2人に1枚ずつ選んでももらい,5枚ずつ確認するところまでは同じです。どちらか1人のカードがあったところで,確認を止め,5枚を手にとり,残りのトランプをデックに戻します。5枚のトランプにおまじないをかけて,裏向きのまま開くと,表向きにもう1人のトランプが出現します。5枚をあらためると,先ほどあったはずの,1人目のトランプがなくなっています。このトランプは,デックの中から表向きで出現します。トランプの変化&飛行現象です*2
 先日,知り合いに見せていただいた手順では,演者がトランプの表を自分の方に向けながら,客のトランプを含めた5枚を選んでいました。確かにこうすれば,面倒なコントロールがいりません*3。客のトランプの消失もおまじないだけで消していました。たいへん,簡略化された手順です。
 また,マジェイアさんのバニシングデックのページでは,前半部分で参考になる手順が紹介されています。演者はデックを切った後,2つに分けて,どちらかのトップ5枚の中に客のカードがあると予言します。この方法は,あの,気になる部分*4のひとつの解決方法だと思います。また,客のトランプの消失の際は,5枚のトランプを客の手の中に握らせています。この辺もスマートなやり方です。
 このドリーム(仮称)という手品,原案もタイトルも知りませんが,もっとも気に入っている手品のひとつです。

*1:「カードマジック入門事典P196 スマグ・デパーチャー/エドワード・マロー作」は5枚のトランプをジョーカー2枚と相手のトランプに変えて,簡略化したもののようです。その解説に「ポイント・オブ・デパーチャー/アレックス・エルムズレイ作」の改案と書かれているので,ポイント・オブ・デパーチャーがドリームの原案でしょうか?

*2:この2人用の手順は「デビリッシュリー・ダイレクト」として「高木重朗の不思議な世界/リチャード・カウフマン著」に紹介されています。

*3:ビドルムーブのみで演じることができます。

*4:若干ネタばれ。注意深く手順を読んでいただくとわかりますが,「デックの上半分を取り上げ」の部分です。なぜデック全体を取り上げないのか,なんの説明もありません。というか,良い説明がない。私は,有無を言わせず,流れで上半分を取り上げています。